多くの動植物の生息域が、近年の気候変動に呼応して移動している。気温が上昇するにつれ、山岳のように「行き場のない」生態系はより大きく脅かされると考えられる。しかし、種の存続は、その気候の最終的な持続期間だけでなく、移動する気候帯に種が遅れずについていけるかどうかにもよっていると考えられる。本論文では、気温変化速度(km yr−1)という新たな指標を示す。これは、21世紀の気温上昇の空間的勾配(°C km−1)および気温上昇速度の多モデルアンサンブル予測(°C yr−1)から導かれる。この指標は、一定の気温を維持するのに必要な地表面上の瞬間局所速度を表すものであり、全球平均値は0.42 km yr−1となる(排出シナリオA1Bによる)。地形による影響のため、気温変化速度は、熱帯および亜熱帯の針葉樹林(0.08 km yr−1)や温帯の針葉樹林、山地の草原など、山岳地帯のバイオームで最も低くなっている。速度が最も大きいのは、冠水草原(1.26 km yr−1)、マングローブ林、および砂漠である。速度の大きさから、気候の滞留時間が100年を超える大規模保護区域が、全体のわずか8%にすぎないことが示唆される。地中海性および温帯の針葉樹林バイオームでは、保護区域の小ささが問題を悪化させている。砂漠のバイオームでは、保護区域の大きさが問題を緩和させる可能性がある。今回の結果は、気候変動による生物多様性の減少を最小限にするための管理戦略を示している。山地の景観では、多くの種が次の世紀まで効果的に保全される可能性がある。それ以外の地域では、二酸化炭素排出量の削減、保護区域ネットワークの大幅な拡張、または生物種の移動を促進させる取り組みが必要だと考えられる。