Letter がん:Igh 3′調節領域 によるIgh–c-myc転座の長区間作用型発がん活性化 2009年12月10日 Nature 462, 7274 doi: 10.1038/nature08633 ヒトバーキットリンパ腫などのB細胞悪性腫瘍では、c-mycなどのがん原遺伝子を免疫グロブリン重鎖遺伝子座(IgH、Ighによってコードされる)へと結びつける転座を有することが多い。このような転座内でがん遺伝子を活性化させるエレメントの性質は、長年にわたる疑問であった。Igh内での転座にはDNA二本鎖切断が関与しており、この切断は、V(D)J(variable, diversity and joining gene segment)組み換え中にRAG1/2エンドヌクレアーゼによって、あるいはクラススイッチ組み換え(CSR)中に活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID、AICDAとしても知られる)によって始まる。前駆B(プロB)細胞内でのV(D)J組み換えは、µ鎖定常領域(Cµ)エキソンの上流にIgh可変領域エキソンを集めるが、これらのCµエキソンは数百キロベース(kb)に及ぶCH座内における何種類かのCHエキソン(「CH遺伝子」)の最初のセットである。成熟B細胞では、CSRはCµを取り除き、下流のCH遺伝子と交換する。可変領域エキソンとCµの間に存在するイントロンエンハンサー(iEµ)は、発生中のB細胞でV(D)J組み換えを促進する。さらに、Igh 3′調節領域(Igh3′RR)は、CH座の下流に位置し、CH遺伝子の長区間にわたる転写増強によってCSRを制御する。c-mycと融合したiEµまたはIgh3′RR配列をもつトランスジェニックマウスはBリンパ腫を発症しやすく、これらのエレメントに発がん遺伝子c-mycを発現させる能力があることを示している。しかし、多くのB細胞リンパ腫では、Igh–c-mycの転座はiEµを除去して、c-mycをIgh3′RRの最長200 kb上流に置く。今回我々は、Igh–c-mycの転座を有するB細胞リンパ腫の異なる2種類のマウスモデルで、Igh3′RRの不活性化により、この遺伝子の発がんにおける役割について検討する。Igh3′RRは、V(D)J組み換えによる転座があるプロB細胞リンパ腫には必要とされないが、CSRに伴う転座による末梢性B細胞リンパ腫には必要とされることがわかった。CSRに伴うIghの切断、あるいは末梢性B細胞リンパ腫前駆細胞のIgh–c-myc転座にはIgh3′RRは必要とされないことから、この調節領域は、転座したc-myc遺伝子が長区間にわたって発生段階特異的に活性化されることで発がん活性をもつようになる、と我々は結論する。 Full Text PDF 目次へ戻る