Letter 細胞:AlaRSの認識ジレンマによって引き起こされる、セリンをアラニンと取り違える翻訳の矛盾 2009年12月10日 Nature 462, 7274 doi: 10.1038/nature08612 アラニルtRNA合成酵素(AlaRS)がセリンをアラニンと取り違えることにより生じる翻訳の誤りは、機能的に深刻な結果を生む。進化の過程全体を通じて、2種類の編集チェックポイント機構が、AlaRSの活性部位でグリシンやセリンとアラニンが取り違えられて生じる、病気の原因にもなる「誤訳」を防いでいる。細菌でもマウスでも、Serの誤った取り込みはGlyよりも大きな問題となる。1つのチェックポイントはAlaRSの編集中心であり、もう1つは広範にみられるAlaXpというゲノムにコードされる独立の編集タンパク質で、これがSer-tRNAAlaを除去する。アラニンよりも小さいアミノ酸(グリシン)と大きいアミノ酸(セリン)を誤って取り込むという矛盾は、自然が設計したAlaRSの深刻な問題となっている。今回我々は、この問題点の化学的基盤を明らかにする。9種類の結晶構造と速度論的解析、変異解析を組み合わせることにより、各アミノ酸のアデニル化反応の概略が明らかになった。もともと備わっているジレンマの1つは、結合したアミノ酸のαアミノ基を酸性残基を用いて固定するという、構造設計の制約から生じる。この設計ができたのは30億年以上も前にさかのぼるが、セリンのOHとも偶発的に結合し、これを避けるのは難しい。アラニンを認識するこれ以上優れた構造は見つけられなかったためか、誤ってセリンを活性化するという問題は、初期AlaRSと同時期に生じたと思われる、独立したAlaXpによって解決されたのである。これらの結果から、進化史上で起こったタンパク質合成装置の設計によって生じた、型破りな問題とその解決方法が明らかになった。 Full Text PDF 目次へ戻る