Letter 発生:発生初期のキラルな割球配置が巻貝胚の左右非対称性経路を決定する 2009年12月10日 Nature 462, 7274 doi: 10.1038/nature08597 ほとんどの動物では体の内部か外部、あるいはその両方に左右非対称性がみられる。脊椎動物や無脊椎動物において左右非対称性を決定するいくつかの機構が示されてきたが、特に発生初期段階におけるそれらの機構はまだよく解明されていない。腹足類のヨーロッパモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)とその近縁種のソトモノアラガイ(Lymnaea peregra)は、どちらも同一種内に左巻(劣性)と右巻(優性)が存在する巻貝で、その巻型(キラリティー=左右性)は遺伝し、母系作用する単一遺伝子座によって決定される。興味深いことに、その巻型決定遺伝子(群)と作用機構はまだ明らかになっていない。本研究では、L. stagnalisにおける(2細胞期や4細胞期ではなく)8細胞期でのキラルな割球の配置(旋性)が、発生プログラムを通じて左右非対称性を決定し、Nodalシグナル伝達経路の上流で働くことを示す。第3卵割(4細胞期から8細胞期への卵割)の割球の旋性を顕微鏡下で人為的に操作することで、胚の巻型を逆転させることができた。これらの操作された胚は、「左巻化」された右巻貝や、「右巻化」された左巻貝となり、つまり母親の遺伝的情報にコードされた左右非対称性が逆転しているが、ほかはすべて正常で稔性のある個体に成長する。さらに、この操作は胚でのnodal発現パターンを左右逆転させた。戻し交配したF7コンジェニック系統を用い、巻型決定遺伝子(群)と、優性型の卵割旋性が促進される第3卵割のキラルな細胞骨格動態との間に強い遺伝学的関連があることを示す。これらの結果は、巻貝胚の左右性形成時のシグナル伝達経路を制御するうえで、母性効果により決定される8細胞期の割球配置が決定的に重要であることを証明するものである。同様のキラルな割球配置機構による左右性の制御は、脊椎動物あるいは新口動物での左右パターン形成でも、Nodal経路の上流で機能しているのかもしれない。 Full Text PDF 目次へ戻る