Letter 生化学:カルパインのカルシウム結合構造とカルパスタチンによる阻害機構 2008年11月20日 Nature 456, 7220 doi: 10.1038/nature07451 カルパインはカルシウムシグナルに応答して選択的にタンパク質を切断する、リソソームに局在しないカルシウム依存性システインプロテアーゼであり、したがって、細胞骨格の再編成や細胞周期進行、遺伝子発現やアポトーシスによる細胞死などの細胞機能を制御している。哺乳類では、カルパインファミリーの最もよく特徴がわかっている2つのメンバー、カルパイン1とカルパイン2(それぞれ、µ-カルパインとm-カルパインと呼ばれる)が広く発現している。カルパインの活性は、内在性阻害物質剤であるカルパスタチンにより厳密に制御されており、カルパスタチンは可逆的に結合できる、確固とした構造を本来的にもたないタンパク質で、カルシウムが存在する場合にのみ、4分子のカルパインを阻害する。今のところ、カルパスタチンによる阻害機構とその完全な選択性の基盤は推測の域にとどまっている。このはっきりした構造をもたないタンパク質が、自身が切断されることなくカルパインを阻害する仕組みは明らかになっておらず、カルパスタチンのカルパインへの結合を促進する変化をカルシウムが起こす仕組みも知られていない。今回我々は、カルシウムが結合したカルパイン2に、カルパスタチンの4つの阻害ドメインの1つが結合したヘテロ二量体の分解能2.4Åでの結晶構造を報告する。カルパスタチンは活性部位のクレフト(裂け目)の両端をふさぐことでカルパインを阻害していることがわかった。カルパスタチンは活性部位のクレフトを通り抜けているが、活性部位のシステインの回りでループ状に回って外に突出するという新規なやり方で切断を回避している。カルパスタチンの阻害ドメインは、カルパインがカルシウムを結合した場合にのみ存在するようになる複数の低親和性部位を認識し、その結果、厳密で特異的なカルシウム依存性の相互作用が起こる。また、この結晶構造および関連複合体の構造から、カルパインにカルシウムが結合した際に起こる活性部位のクレフトの開口や、よりコンパクトな酵素形態を作り出すためのドメイン相互間の動きなどのコンホメーション変化が明らかになった。 Full Text PDF 目次へ戻る