発話や音楽など多くの複雑な行動では、さまざまな時間スケールをもつ構造が階層的に組み立てられているが、脳がどのようにして行動列の実行タイミングを制御しているのか、また、1つの行動について異なる時間スケールごとに制御する回路も異なっているのかどうかは、よくわかっていない。本論文では、鳴禽で歌(さえずり)の生成に関与している前脳のさまざまな領域の生物物理学的動態を温度変化によって操作するという手法により、この問題に取り組んだ。前運動核HVC(かつて高次発声中枢という名称で知られていた)を冷却すると、歌の速度がすべての時間スケールにわたって最大45パーセント低下したが、音響的な構造にはわずかな変化しかなかった。一方、その下流の運動核RA(robust nucleus of the arcopallium)を冷却しても、歌の音響構造的タイミングには目立った影響はなかった。これらの観察結果は、HVC内の動態が、おそらく連鎖的な構成を通じて、歌の音響構造的タイミングの制御にかかわっていることを示唆する。脳の温度の局所的操作は、行動列の実行タイミングを制御する神経回路の同定や、もっと一般的には、神経系での振動型やその他の型の脳動態の起源や役割についての研究に、広く適用できると考えられる。