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聴覚:ステレオシリン欠損マウスによって明らかになった蝸牛における波形の歪みの由来

Nature 456, 7219 doi: 10.1038/nature07380

蝸牛は音の増幅装置であり、また著しい高感度で精密に調整された検出器だが、機械的、電気的な波形の顕著な歪みも生じさせる。このような歪みは、蝸牛内の機械的な非線形相互作用を表している。1つの音が他の音を抑制すること(マスキング効果)によって、こうした相互作用は話の聞き取りやすさを高めている。また、音が組み合わさると、元の音響刺激には存在しない振動数の音が生じる場合もある。このような音によって構成されるのが耳音響放射で、これは新生児の聴覚検査に広く使われている。蝸牛での増幅と歪みはどちらも、2種類ある感覚受容体細胞の1つである外有毛細胞から生じているので、これらは共通の機構によるものだと考えられている。今回我々は、蝸牛の波形の歪みの基盤となる非線形性が、ステレオシリンというタンパク質の存在に依存することを明らかにする。ステレオシリンはヒトの劣性難聴の場合に異常がみられるタンパク質で、外有毛細胞がもつ不動毛束中で隣接する不動毛先端を結びつけている水平な先端糸に関係していることがわかっている。ステレオシリンをもたない変異マウスではこの連結構造が消失しており、次第に聴力が失われた。しかし聴覚の発生当初は、蝸牛の感受性と振動数調節はほぼ正常だったが、マスキングは著しく低下しており、音響的、電気的な波形歪みは全くみられなかった。この独特な機能状況から、蝸牛における波形歪み発生の主要な要因は、不動毛のふれの程度に依存する不動毛束の剛性であり、これは不動毛先端を連結する先端糸による束縛から生じるもので、機械電気変換チャネルの内因的な非線形挙動によるものではないと考えられる。

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