Letter 生理:飢餓による誘導可能なスイッチがアクチベーター/コアクチベーターの交換を介して糖新生を調節する 2008年11月13日 Nature 456, 7219 doi: 10.1038/nature07349 飢餓の初期には膵臓からのグルカゴンに応答して骨格筋のタンパク質分解が増加し、肝臓での糖新生に使えるようにアミノ酸が遊離する。タンパク質の温存を図る飢餓の後期段階では、肝臓でケトン体生産が行われてグルコース依存型の臓器に代替燃料として供給され、肝臓でのグルコース産生はなくなる。グルカゴンは、CRTC2(CREB regulated transcription coactivator 2、TORC2とも呼ばれる)の脱リン酸化と核への移行を促すことにより、糖新生経路を促進するが、一方、並行してインスリンシグナル伝達が低下し、FOXO1(Forkhead box O1)の脱リン酸化と核輸送を介して糖新生遺伝子の発現が亢進する。今回我々は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼp300と栄養素を感知するデアセチラーゼ、サーチュイン1(SIRT1)によって構成される飢餓誘導性スイッチが、CRTC2とFOXO1を順に誘導することによってエネルギーバランスを維持していることを、マウスで明らかにする。CRTC2は、グルカゴンによって誘導されるとp300と結合することによって糖新生遺伝子の発現を促進したが、飢餓の際にはこのp300がSer 89の脱リン酸化によって活性化されることも、今回我々は明らかにする。次に、このp300がCRTC2のLys 628をアセチル化することにより、肝臓でのCRTC2活性が上昇する。このLys 628は、E3リガーゼであるCOP1(constitutive photomorphogenic protein )によるユビキチン化部位でもあり、この部位がユビキチン化されると、CRTC2は分解の標的となる。グルカゴンの作用は飢餓の後期には弱まり、CRTC2はSIRT1を介した脱アセチル化によって下方制御され、FOXO1が糖新生系の発現を支える。Sirt1遺伝子を肝臓特異的にノックアウトしたりSIRT1アンタゴニストを投与したりすることによりSIRT1の作用を阻害すると、CRTC2活性とグルコース産生が増加するが、SIRT1アゴニストを投与するとCRTC2活性とグルコース産生は低下する。FOXO1とそのコアクチベーターであるペルオキシソーム増殖活性化受容体-γコアクチベーター-1α(PGC-1α、Ppargc1a遺伝子によってコードされる)がSIRT1アクチベーターによって相互活性化されることを考えると、今回の知見から、飢餓における2つの糖新生調節因子の切り替えによりエネルギーバランスが維持される仕組みがわかる。 Full Text PDF 目次へ戻る