Letter 細胞:調節ネットワークによってヒト幹細胞系列の表現型が分類できる 2008年9月18日 Nature 455, 7211 doi: 10.1038/nature07213 幹細胞とは、自己複製能をもち複数の異なった型の細胞に分化できる細胞集団と定義される。しかし、胚、胎児、成人由来の何百種類もの異なったヒト細胞系列が幹細胞と呼ばれており、これらの細胞系列は、胚性幹細胞に代表される多能性細胞のように事実上無限に増殖、分化が可能なものから、それに比べると分化して生じる細胞の種類がはるかに限られる成体幹細胞系列まで、非常に幅が広い。幹細胞を得る新しい材料についての報告が急激に増え、再生医学における有用性が期待されることから、一般的で再現性の高い幹細胞分類法の必要性が高まっている。今回我々は、非常にさまざまな多能性(pluripotent)細胞、多分化能性(multipotent)細胞、分化した細胞に照らし合わせて培養ヒト幹細胞を分類できるようにする、包括的遺伝子発現プロファイルデータベース(「幹細胞マトリックス」と呼ぶ)を作製、解析した。教師なしクラスタリング手法を用いて約150の細胞試料を分類したところ、多能性幹細胞系列がグループを作り、それ以外の細胞は、脳由来の神経幹細胞系列も含めて非常に多様であることがわかった。さらにバイオインフォマティクス手法による解析で、多能性(pluripotent)細胞(胚性幹細胞、胚性がん腫細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞))が共有するタンパク質-タンパク質ネットワーク(PluriNet)の存在が明らかになった。公表されているデータの解析によって、PluriNetはマウスの胚性幹細胞、マウスの人工多能性幹細胞、ヒト卵母細胞も含め、多能性細胞に共通する特徴であることが明らかになった。これらの結果は幹細胞分類の新しい手法につながり、また、多能性と自己複製能が特異的分子ネットワークによる厳密な制御を受けているという考えを裏付けている。 Full Text PDF 目次へ戻る