Letter 細胞:単純ヘルペスウイルス1型が潜伏感染中に発現するマイクロRNAが、ウイルスのmRNAを調節する 2008年8月7日 Nature 454, 7205 doi: 10.1038/nature07103 ヘルペスウイルスは、動物宿主の一生にわたって潜伏感染を維持できるという特徴をもつ。しかし、この潜伏状態の確立と維持を可能にする仕組みはほとんど解明されていない。単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)は感覚神経節のニューロンに潜伏するが、このニューロンで多量にみられるウイルス遺伝子産物は、非コードRNAである潜伏関連転写産物(LAT)1種類だけである。今回我々は、HSV-1感染細胞のLATが、4種類の異なったマイクロRNA(miRNA)をコードするmiRNA一次前駆体であることを明らかにする。これらのmiRNAの1つmiR-H2-3pは、ウイルスのICP0に対しアンチセンス方向に転写される。このICP0はHSV-1の感染直後から初期に働く重要な転写アクチベーターで、増殖性HSV-1複製に重要であり、潜伏感染からの再活性化に役割を果たすと考えられる。miR-H2-3pにはICP0タンパク質の発現を低下させる働きがあるが、ICP0のメッセンジャーRNA量には大きく影響しないことを示す。またHSV-1が潜伏感染した三叉神経節で、HSV-1の5つ目のmiRNA、miR-H6を同定した。これは、これまで知られていなかったLATとは異なる転写産物から生じる。miR-H6は、HSV-1の別の転写因子ICP4をコードするmRNAに対してシード領域(miRNAの標的特異性を決定する領域)の相補性が高く、ICP4の発現を阻害する。HSV-1の増殖性感染の際に、ほとんどの遺伝子は、このICP4を必要とする。LATには潜伏感染を促進する作用があることが報告されており、今回の結果でこれが説明できるかもしれない。すなわち、HSV-1は潜伏感染したニューロンで少なくとも2種類のmiRNA一次前駆体を発現しており、これらがウイルス遺伝子の発現を転写後調節することにより、ウイルスの潜伏感染の確立と維持を可能にしていると考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る