Letter 腫瘍:細胞増殖、代謝、腫瘍形成におけるPI(3)K-p110βの必須の役割 2008年8月7日 Nature 454, 7205 doi: 10.1038/nature07091 受容体による活性化の際に、広く発現しているホスファチジルイノシトール-3-OHキナーゼ(PI(3)K)のクラスIAのアイソフォーム(p110αとp110β)は脂質セカンドメッセンジャーを生じ、多くのシグナル伝達カスケードを惹起する。最近の研究で、増殖因子やインスリンのシグナル伝達におけるp110αの特異的な機能が明らかにされた。p110βの独特な機能を調べるために、我々は条件ノックアウトマウスを作製した。本論文では、作製されたマウスの肝臓でp110βを欠損させると、インスリン感受性や糖の恒常性は障害されるが、Aktのリン酸化にはほとんど影響がないことを示す。このことは、p110βがキナーゼ非依存的にインスリンの代謝作用に関与していることを示唆している。確立されたマウス胎仔繊維芽細胞を用いて調べたところ、p110βの欠損は、インスリンや上皮増殖因子(EGF)刺激によるAktのリン酸化にもほとんど影響を及ぼさないが、細胞増殖が遅延することがわかった。p110βヌル細胞を野生型あるいはキナーゼ活性欠失型のp110β対立遺伝子で再構築することにより、p110βは細胞増殖や細胞内移送の制御においてキナーゼ非依存的な機能を有していることが明らかになった。しかし、p110βのキナーゼ活性は、リゾホスファチジン酸により引き起こされるGタンパク質共役受容体シグナル伝達には必要であり、がん遺伝子による形質転換にかかわっていた。特記すべきは、Pten欠損による前立腺腫瘍形成の動物モデルにおいて、p110β遺伝子(別名 Pik3cb)を欠失させると、腫瘍形成が妨げられ、同時にAktのリン酸化の減弱がみられたことである。一方、 p110α遺伝子(別名Pik3ca)の欠失では、このようなことは起こらなかった。以上を総合すると、今回の結果は、p110βに関するキナーゼ依存性および非依存性両方の働きを明らかにするとともに、p110βのキナーゼ依存性の作用ががん治療の有力な標的になることを強く示している。 Full Text PDF 目次へ戻る