Letter 環境:アジアの地下水へのヒ素の流出源は地表付近の湿地堆積物である 2008年7月24日 Nature 454, 7203 doi: 10.1038/nature07093 南アジアと東南アジアでは、ヒ素濃度が安全域を超えている地下水を、何千万人もの人々が毎日飲んでいる。ヒ素は浸食によって生じたヒマラヤ堆積物から自然に出てくるもので、嫌気条件下で固相から還元的に放出されて水に溶け込むと考えられている。しかし、ヒ素の水中濃度を支配する過程と間隙水への放出場所がわかっていないため、ヒ素濃度の空間的な(井戸ごとの)および時間的な(将来の濃度)予測や、ヒ素問題に人的活動が及ぼす影響の評価を十分に行うことができない。多くの研究が注目しているガンジス・ブラマプトラ・デルタでは、灌漑用の大規模揚水で変化した地下水流路の解明が十分でないことが、この不確定性の一因となっている。今回、水文学的測定と(生物)地球化学的測定を用いて、擾乱が最小限のカンボジア・メコンデルタでは、河川に由来する地表付近の堆積物からヒ素が流出し、数百年の時間スケールで地下の帯水層を通って再び河川に戻ることがわかった。地質学的堆積、帯水層の源岩、地域の水文学的勾配が類似しているため、今回の結果は、アジアのこの他の主要なデルタで擾乱前の状態を解明するモデルとなる。さらに、ヒ素の挙動に対する強い水文学的影響が観察されたことは、ヒ素の流出と輸送が現在持続中の、また将来迫り来る人為的擾乱の影響を受けやすいことを示している。特に、灌漑用の地下水揚水、農業活動の変化、堆積物の掘削、堤防の建設、上流のダム建設は、水力学的秩序やヒ素源となる物質を変化させ、ひいては地下水のヒ素濃度とこの健康問題の将来に影響を与えるだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る