Letter 進化:ミツバチにおける新規な性決定経路の進化的発生の証拠 2008年7月24日 Nature 454, 7203 doi: 10.1038/nature07052 セイヨウミツバチ(Apis mellifera)の性は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の性染色体によるよく研究されている機構とは違って、complementary sex determiner(csd)遺伝子がある単一の遺伝子座のヘテロ接合性によって決定される。csdがヘテロ接合のミツバチは雌であり、ホモ接合、ヘミ接合(一倍体の個体)は雄である。天然のミツバチ集団では、少なくとも15種類のcsd対立遺伝子が知られているが、対立遺伝子の相互作用と性発生プログラムの切り替えとが、どのような仕組みで結びつくのかは解明されていない。今回我々は、csdの12キロ塩基上流にコードされている、ミツバチ性決定経路の新しい成分を発見した。この遺伝子feminizer(fem)はcsdの保存された祖先遺伝子で、Arg/Serの多いドメインをもつSR型タンパク質をコードしている。Femは、ショウジョウバエの主要な性決定遺伝子transformer(tra)と、Arg/Serの多いドメインおよびプロリンの多いドメインの構成が同じだが、traでよく保存されているモチーフはもたない。ただし、30アミノ酸からなるモチーフ1個は例外で、チチュウカイミバエ(Ceratitis capitata)という別種のハエのTraとだけ共有する。traと同様に、femの転写物も選択的スプライシングを受ける。雄に特異的なスプライス産物には未成熟終止コドンが含まれ、機能をもったタンパク質は作られない。一方、雌に特異的なスプライス産物は機能をもったタンパク質をコードする。我々は、雌特異的なfemスプライス産物をRNA干渉(RNAi)によりノックダウンすると雄になることを明らかにし、完全な雌の発生にfem産物が必要であることを示す。さらに、雌の対立遺伝子csd転写産物をRNAiによってノックダウンすると、雄特異的なfemスプライス産物が生じることから、fem遺伝子がcsdのヘテロ接合性によって制御される発生経路の切り替えスイッチの役割を果たすことが示唆される。femとcsdのコード配列をハチ5種で比較解析したところ、ミツバチ系列でfemの祖先からcsdが最近生じたことが示唆され、femにおける純化選択を伴ったcsdの正の選択の証拠が得られた。このハチfem遺伝子座から、遺伝子重複と正の選択が、新しい性決定経路の起源の基盤となる進化機構であることが明らかになった。 Full Text PDF 目次へ戻る