Letter 脳:嗅内野グリッド細胞における海馬とは独立な位相歳差 2008年6月26日 Nature 453, 7199 doi: 10.1038/nature06957 海馬場所細胞のシータ位相歳差は、脳の時間的符号化のモデルの中で、最もよく研究されているものの1つである。シータ位相歳差とは発火タイミングの変化現象で、動物が場所ニューロンの発火する限られた空間領域を通るうちに、そのニューロンの発火がしだいに細胞外のシータリズムより早い位相で起こるようになることをいう。個々のシータ活動サイクル内では、この位相前進によって、動物個体の動線に沿って次々と活性化される場所細胞の発火順序が時間的に短縮されて現れることになり、その時間スケールは、同じ発火順序内の異なる部分に属するニューロン間で発火タイミング依存的可塑性が可能になるのに十分な短さである。しかし、位相歳差に必要なニューロン回路は確定していない。位相歳差が前頭前野などの海馬の出力先構造にみられるという事実は、遠心性構造が海馬から位相歳差を引き継いでいるか、あるいはそうした構造内で局所的に発生しているかの、どちらかであることを示唆している。今回我々は、内側嗅内皮質の第II層にある空間的に調節されるグリッド細胞、つまり海馬の1つ手前のシナプスで、海馬とは独立に位相歳差が現れることを見いだした。位相歳差はほぼすべての第II層主細胞でみられたが、第III層ではまばらにしかみられなかった。海馬の活動を止めても第II層の位相歳差は阻害されないため、位相歳差はグリッド細胞同士のネットワーク内で発生していることが示唆される。この結果から、グリッド形成の可能な機構が示され、海馬の位相歳差は嗅内皮質から引き継いだものである可能性が浮上する。 Full Text PDF 目次へ戻る