Letter 細胞:腫瘍抑制遺伝子p15のアンチセンスRNAによるエピジェネティックなサイレンシング 2008年1月10日 Nature 451, 7175 doi: 10.1038/nature06468 正常な細胞の増殖を抑制するがん抑制遺伝子(TSG)は、細胞ががん化すると頻繁にエピジェネティックなサイレンシングを受ける。DNAメチル化は一般にTSGサイレンシングと関係があるとされているが、がん化に際してのDNAメチル化開始および認識機構の変異については不明である。遺伝子制御機構の興味深い可能性として、マイクロRNA、Piwiと相互作用するRNA、アンチセンスRNAなど、広範囲に及ぶ非コードRNAが挙げられる。広範なセンス-アンチセンス転写物は、哺乳類細胞では系統的に同定されており、網羅的なトランスクリプトーム解析から、最大70%の転写物にアンチセンス配列対が存在し、アンチセンスRNAの変動によりセンス遺伝子の発現が変化しうることが示されている。例えば、1人の患者で、自然発生ではなく遺伝子変異によって誘導されたアンチセンス転写物により、遺伝子サイレンシングとDNAメチル化が生じ、その結果サラセミアが発症することが示されている。本論文で我々は、多くのTSGの近くにはアンチセンスRNAが存在することを明らかにし、白血病と関係するとされているサイクリン依存性キナーゼ阻害因子p15のサイレンシングにおける1つのRNAの役割に注目した。白血病ではp15のアンチセンス(p15AS)とp15のセンス発現の間に逆相関がみられることがわかった。p15ASの発現物質は、ヘテロクロマチン形成によってシスおよびトランスでp15のサイレンシングを誘導するが、DNAメチル化は誘導しないことがわかった。p15ASの発現停止後もサイレンシングは持続したが、メチル化阻害剤とヘテロクロマチン阻害剤はこの過程を元に戻した。p15ASに誘導されるサイレンシングは、ダイサーとは無関係であった。マウス胚性幹細胞における外来のp15ASの発現は、ヘテロクロマチン形成によってp15サイレンシングを引き起こして成長を促進し、さらに胚性幹細胞の分化後にはDNAメチル化も引き起こした。以上より、自然に存在するアンチセンスRNAは、腫瘍形成時のTSGサイレンシングにおけるヘテロクロマチン形成およびDNAメチル化の引き金となる可能性がある。 Full Text PDF 目次へ戻る