持続的に抑制されている構成的へテロクロマチンや、持続的に活性化されているユークロマチンとは対照的に、条件的へテロクロマチンは、転写抑制状態と転写活性化状態を交互にとることができる。そのため、条件的へテロクロマチンは、転写状態と関連するクロマチン構造の変化の分子基盤を解明するための有益な情報源となる。サーチュイン1(SIRT1)とSUV39H1(suppressor of variegation3-9 homologue 1)は、条件的へテロクロマチン形成に関連するクロマチン調節を行う酵素に属している。SUV39H1は、ヘテロクロマチン領域中のリシン9にトリメチル基をもつ、ヒストンH3(H3K9me3)の蓄積に重要な働きをする酵素である。SIRT1は、ヒストンH4のリシン16を標的とするNAD+依存性デアセチラーゼであり、また、どのような機構によるのかは不明だが、H3K9me3レベルを上昇させる。今回我々は、哺乳類ヒストンメチルトランスフェラーゼであるSUV39H1自体がヒストンデアセチラーゼSIRT1の標的であり、SUV39H1活性は、触媒SETドメイン中のリシン残基266のアセチル化によって調節されていることを明らかにする。SIRT1はSUV39H1と直接結合して引き寄せ、脱アセチル化する。これらの作用はそれぞれ独立にSUV39H1の活性上昇に貢献し、その結果、H3K9me3修飾が増加する。SIRT1を欠失させると、SUV39H1の働きによるH3K9me3形成に大きな影響が現れ、ヘテロクロマチンタンパク質1の局在化が妨げられる。今回の知見は、ヘテロクロマチンに関係するヒストンメチルトランスフェラーゼSUV39H1とヒストン脱アセチル化酵素SIRT1との間に機能的な結びつきがあることを実証するものである。