Letter

物性:振動モードの選択的励起によるマンガン酸化物の電子相の制御

Nature 449, 7158 doi: 10.1038/nature06119

特定の振動モードのコヒーレントな操作による物質の相制御は、長年にわたって超高速科学にとって魅力的な(しかし容易には実現できない)目標であった。強く相関した電子をもつ固体では、結晶格子のごくわずかなひずみでさえ電子的特性や磁気的特性に大きな変化をもたらしうるので、競合する相の間での遷移の方向付けが選択的な振動モードの励起によって可能になる。あるいは逆に、系の電子基底状態のダイナミクスを調べることが可能となり、その基礎となる物理的性質に対して新たな理解が得られると思われる。今回我々は、巨大磁気抵抗を示すマンガン酸化物で、71 meV(17 THz)のフォノンモードを直接励起することによって達成された電子相の超高速スイッチングについて報告する。安定絶縁相から準安定金属相への非平衡転移に伴い、高速に起こる5桁もの抵抗率低下が観察される。光誘起相転移や電流駆動相転移とは対照的に、今回観察された振動モード励起によるバンドギャップの消失(金属化)は、ホットキャリア注入とは無関係であり、大きな振幅のMn-Oひずみが唯一の原因である。これはペロブスカイト構造の許容因子(格子ひずみの源)の変化に対応し、ひいては、サイト間の軌道の重なりを通して電子バンド幅を制御する。選択された金属-酸素フォノンのコヒーレント操作による相制御は、他の複雑な固体、特に電子的特性に及ぼすCu-O振動の役割が現在議論の的になっている銅酸化物超伝導体においても、幅広い応用が見いだされるはずである。

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