Letter

拘束された前駆細胞から白血病幹細胞へのMLL-AF9によって誘導される形質転換

Nature 442, 7104 doi: 10.1038/nature04980

白血病などのがんには、がんの発生と維持に必要な、限度のない自己再生能力をもつ稀少な細胞集団が存在する。どのような抗がん治療でもそれを成功させるには、おそらくこのようながん幹細胞の根絶が不可欠な要因であり、従来の抗がん療法の多くが、腫瘍の組織量減少には効果があるのに治癒に至るのはごくまれなのはこのためであると考えられる。正常な幹細胞とがん幹細胞は共に自己再生能力があることから、がん幹細胞を標的とする治療法の開発においては、がん幹細胞が正常な組織幹細胞にどの程度似ているかが重要な問題となる。しかし、がん幹細胞は正常な組織幹細胞に表現型のうえで似ているのか、それとも、発生上の運命が決まっていた(拘束された)元の前駆細胞の性質を保持しうるのかどうかは、まだ解明されていない。今回我々は、白血病幹細胞(LSC)が、その起源となった前駆細胞の全体的な性質を保ちながら、幹細胞や自己再生能力に関連したプログラムを限定的に活性化していることを明らかにする。拘束された顆粒球マクロファージ前駆細胞で、t(9;11)(p22;q23)にコードされるMLL-AF9融合タンパク質を導入して白血病を発症させ、LSCを単離した。このLSCは、わずか4個の細胞を移入するだけで二次レシピエントマウスに白血病を発生させ、しかも免疫表現型と全遺伝子発現プロファイルは、正常な顆粒球マクロファージ前駆細胞と極めてよく似ていた。しかし、正常な造血幹細胞で高度に発現している一群の遺伝子が、このLSCでは再活性化されていた。したがってLSCは、拘束された前駆細胞から遺伝子発現の広範なリプログラミングをしなくても発生でき、その過程で、白血病の自己再生能に関連した特徴的な遺伝子群が活性化される。今回の知見は、正常な前駆細胞からがん幹細胞への変化を捉えたもので、異常な状況における自己再生プログラムの発現を標的にできる可能性を示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度