Letter 生化学:酸化DNA/RNA修復酵素AlkBの触媒複合体の結晶構造 2006年2月16日 Nature 439, 7078 doi: 10.1038/nature04561 環境に由来する、あるいは内在性のアルキル化物質による核酸の損傷は、突然変異誘発性損傷および細胞傷害性損傷の両方を作り出す。後者、つまり細胞傷害性は、アルキル化物質が臨床的がん化学療法に広く用いられる理由となっている。大腸菌AlkBおよびヒトの相同タンパク質であるABH2、ABH3は、SN2アルキル化剤によって損傷を受けたDNAおよびRNA塩基を無差別に修復する。SN2アルキル化剤は環内窒素原子(アデニン、グアニンのN1およびチミン、シトシンのN3)に炭化水素を付加する。DNA修復におけるAlkBの役割はずっと以前に表現型に関する研究によって確定されているが、配列プロファイル解析によってAlkBが鉄‐オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ・スーパーファミリーに属することが最近になって初めてわかり、その生化学的活性が詳細に解明された。この群に属する酵素は、補因子の二価鉄と補基質の2-オキソグルタル酸を使って有機基質を酸化する。AlkBはアルキル化されたヌクレオチド塩基を水酸化して不安定な産物を生成し、これがアルデヒドを放出して、その結果無修飾の塩基が再生される。今回我々は、大腸菌AlkBの基質複合体および生成物複合体の結晶構造を、分解能1.8〜2.3Åで決定した。AlkBの鉄‐2‐オキソグルタル酸ジオキシゲナーゼ・コアは、このスーパーファミリーに属する他のメンバーのコアと一致するが、AlkBに独自のサブドメインがポリヌクレオチド骨格への接触を介して、メチル化されたトリヌクレオチド基質を活性部位に保持している。アミド水素交換実験や結晶学的解析から、基質と結合するこの「ふた」のコンホメーションが柔軟なために、この酵素はアルキル化された多様なヌクレオチド基質を触媒反応に最適な配置を取るようにつなぎ止められるものと考えられる。これらの異なる結晶構造から、酸素分子の活性部位への拡散をゲート制御していると考えられているトンネルの開状態および閉状態の構造が明らかになる。嫌気的条件下で作製したミカエリス複合体結晶を空気にさらすと、2‐オキソグルタル酸はゆっくりではあるが相当程度まで酸化され、これはヌクレオチド酸化と共役しているが効率が悪い。以上の知見から、タンパク質の動力学的性質が酸化還元反応を調節していると考えられる。また触媒活性をもつ鉄イオン上に作られる反応性の高いオキシ-フェリルリガンドが行うと考えられる移動は、タンパク質が結晶格子内にあって動きが制約されている場合には妨げられることを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る