Article

細胞:細胞の運命決定システムで調節をうけながら決まる細胞の個体差

Nature 437, 7059 doi: 10.1038/nature03998

今回我々は、真核細胞の運命決定システムの原型といえる酵母の接合フェロモン応答経路の量的挙動と細胞どうしの個体差について研究を行った。遺伝的に全く同一な数千個の細胞を用いて、システムの出力の差異が何に由来するのかを分析、測定した。応答に際して起こる遺伝子の転写や翻訳のランダムな揺らぎ(「発現ノイズ」)が原因で生じる細胞の個体差はごくわずかだった。むしろ細胞の個体差の大部分は、個々の細胞の経路を介したシグナル伝達能力(「経路容量」)の違いや遺伝子からのタンパク質発現(「発現能力」)の違いによるものだった。高い発現能力をもつ細胞の方がタンパク質の発現速度が高く、体積の増加もより速い。今回の研究で、経路容量における細胞間のばらつきを調節している機構が2つ明らかになった。第1に、高いフェロモン濃度ではMAPキナーゼFus3がばらつきを抑制し、低いフェロモン濃度ではMAPキナーゼKss1がばらつきを大きくする。第2に、経路容量と発現能力とは負の相関関係があり、発現能力に大きな違いがあっても細胞がフェロモンに対してより正確に応答できるようにする代償機構の存在が示唆される。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度