細胞間の情報伝達を媒介するシグナル伝達経路は、発生、細胞分化およびホメオスタシスに不可欠である。また、シグナル伝達経路の調節異常はしばしばヒトの悪性腫瘍に関連している。JAK/STAT(Janus tyrosine kinase/ signal transducer and activator of transcription)経路はそのようなシグナル伝達カスケードの1つであり、その進化的に保存された役割には細胞増殖や造血などがある。本論文では、JAK/STAT経路の活性に必要とされる遺伝子の系統的なゲノム全域での調査について述べる。キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の培養血球様細胞において、20,026のRNA干渉(RNAi)によって誘導された表現型を解析し、既知の4つのタンパク質とこれまで特徴が明らかにされていない86のタンパク質をコードする相互作用遺伝子を同定した。次に、これらのタンパク質をこのシグナル伝達カスケードの既知の構成要素との相互作用に基づいて分類するために、細胞系でのエピスタシス解析を利用した。多数のヒト疾患遺伝子の相同体に加えて、チロシンホスファターゼPtp61Fと白血病において異常のあるブロモドメイン含有タンパク質BRWD3のショウジョウバエ相同体を見いだした。さらに、in vivoの解析から、dBRWD3の阻害およびPtp61Fの過剰発現は、白血病様の血球腫瘍を抑制する機能をもつことを明らかにした。この選別によって、JAK/STATシグナル伝達に必要とされる新規遺伝子座を包括的に同定し、ヒトの癌に関連する重要な経路を分子レベルで考察する。同定された経路修飾因子のヒト相同体は、治療的介入の標的となると考えられる。