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細胞:ヒトの母斑でみられるBRAFE600が関連した老化類似の細胞周期停止

Nature 436, 7051 doi: 10.1038/nature03890

正常な哺乳類細胞の大半は決まった寿命をもち、これが際限のない増殖を防ぐしくみの1つと考えられている。この現象は老化とよばれ、テロメアの短縮によって起こり、p16INK4aなどの癌抑制因子の誘導を引き起こす。培養細胞では、癌遺伝子によって老化の時期を早めることができるが、このような癌遺伝子による老化が生理的な老化過程に相当するかどうかは、長く議論が分かれていた。ヒトの母斑(あざ)はメラニン形成細胞の良性腫瘍で、RASの下流ではたらくプロテインキナーゼBRAFに発癌性変異(主としてV600Eで、バリンが置換されてグルタミン酸になっている)を持つことが多い。それにもかかわらず、母斑は何十年にもわたって成長停止状態にとどまるのが普通で、悪性に進行する(黒色腫)ことは非常にまれである。そのため、母斑でBRAFE600が誘導する老化が起こるかどうかは疑問視されていた。本論文では、ヒトのメラニン形成細胞では持続的なBRAFE600の発現によって細胞周期の停止が起こり、それにともなってp16INK4aと老化のマーカーとして広く使われる老化関連酸性β-ガラクトシダーゼ(SA-β-Gal)活性が誘導されることを明らかにする。先天性の母斑が例外なくSA-β-Gal陽性であることは、これらの結果をin vivoで裏付けるもので、ほとんど成長が停止したヒトの腫瘍性損傷にこの古典的老化関連マーカーが存在することが実証された。成長が停止したメラニン形成細胞では、in vitroでもin situでも、p16INK4aはモザイク状に誘導されることがはっきりと観察され、BRAFE600による増殖を抑えているのはp16INK4a以外の因子であることが示唆される。母斑ではテロメアの短縮はみられないので、複製能の喪失ではなく、癌遺伝子が押し進める能動的な老化過程の方が起こっていると考えられる。このようにin vitroでもin vivoでも、BRAFE600を発現するメラニン形成細胞は老化の古典的な特徴を示しており、癌遺伝子が誘導する老化は本来的な生理的防御過程に相当すると考えられる。

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