Article 細胞:癌遺伝子が誘導する老化はリンパ腫発生に対する初期の障壁となる 2005年8月4日 Nature 436, 7051 doi: 10.1038/nature03841 発癌性Rasの急激な誘導は、網膜芽細胞腫(Rb)経路がかかわる細胞老化を引き起こすが、老化がin vivoで腫瘍を抑制できるのかどうかはまだわかっていない。最近、ヒストンH3の9番目のリジンのメチル化(H3K9me)を伴ったヘテロクロマチン形成による、増殖促進遺伝子のRbを介したサイレンシングが細胞老化の重大な特徴であることが明らかにされたが、そうであるとすると老化はヒストンメチルトランスフェラーゼSuv39h1に依存する可能性がある。本論文では、Suv39h1、あるいは比較用にp53遺伝子座を標的としたヘテロ接合損傷を持つEμ-N-Rasトランスジェニックマウスが、それぞれSuv39h1またはp53の発現を欠く浸潤性のT細胞リンパ腫を発症することを示す。これに対して、N-Rasトランスジェニック野生型マウス(対照群)のほとんどでは、非リンパ性の腫瘍がかなり遅れて発症する。初代リンパ細胞の増殖は、発癌性Rasに応答して起こりSuv39h1依存性でH3K9meに関連する老化が引き起こす増殖停止により直接阻止されるため、リンパ腫発生は初期段階で阻止される。Suv39h1欠損リンパ腫細胞は急速な増殖をするが、p53欠失細胞とは異なり、アドリアマイシンによって誘導されるアポトーシスに対して高い感受性を保つ。一方、アポトーシスを遮断した場合には、薬物治療後に対照群のみでリンパ腫細胞が老化するが、Suv39h1欠損またはp53欠損細胞では老化が起こらない。この結果は、H3K9meを介する老化がSuv39h1依存性の新規腫瘍抑制機構であることを示しており、その不活性化により、発癌性Rasに応答して悪性(aggressive)だがアポトーシス感受性を示すリンパ腫の形成が起こる。 Full Text PDF 目次へ戻る