Letter 疫学:コレラの動態に見られる不応期と気候の持つ推進力 2005年8月4日 Nature 436, 7051 doi: 10.1038/nature03820 コレラやマラリア、デング熱など多くの感染症の流行形態は、1年以上にわたり特徴的な複数の期間を経て変化していく。気候変動がこうした経年周期の推進力になっていることを示す証拠に対しては異論も多い。その理由は主に、宿主免疫などの機構によって生じる非線形の疫学動態を考慮に入れた上で環境による推進力の関与だけを分離することが難しいからである。今回我々は、バングラデシュのマトラブ郡の40年にわたる時系列コレラ動態に見られる経年疾患周期を、環境の持つ推進力(特に気候変動)と一過性免疫との重要な相互作用から説明できることを示す。我々は内在性免疫の寄与を認める非線形集団モデルを用い、コレラ優占株(エルトール菌株)について、外力に影響を受ける重要な疫学パラメーターである伝播率を経時的に再構築した。伝播には明らかな経年変動が見られ、この変動は気候パターンに対して長期的(7年以上、モンスーン降雨やブラフマプトラ川の流量が関係)および短期的(7年未満、バングラデシュでの氾濫面積やベンガル湾の海面水温、エルニーニョ‐南方振動が関係)な強い対応がみられる。疾患動態の決定に外的要因と内的要因間の相互作用が重要なことは、不応期に際してよくわかる。この時期には、免疫の結果として集団の疾患感受性レベルが低く、気候の持つ推進力がコレラ発生の規模に弱くしか反映されない。 Full Text PDF 目次へ戻る