Letter 医学:ナノスケールの送達系による時間差をつけた腫瘍細胞と新生微小血管の標的化 2005年7月28日 Nature 436, 7050 doi: 10.1038/nature03794 効果的な癌の治療法を求めて研究が続けられている中で出てきたのが、従来の化学療法と血管の成長を妨げる血管新生阻害剤とを組み合わせる方法である。しかしこの方法の実現には、2つの大きな障害がある。第1に、血管新生阻害剤によって腫瘍の血管を長期にわたって遮断すると、腫瘍に十分な濃度の化学療法剤が届かない可能性がある。第2に、血液の供給が阻害されることによって腫瘍内に低酸素誘導性因子1α(HIF1α)が蓄積する。HIF1αの過剰な発現は、腫瘍の浸潤性の亢進と化学療法耐性の増強に関係がある。本論文では、固形腫瘍に特有のこれらの障害を克服するために、腫瘍の働きを利用した薬剤送達系「ナノセル」を開発したので報告する。ナノセルは、核となるナノ粒子がペグ化脂質の外被内に入った構造をしており、腫瘍はこれを優先的に取り込む。このナノセルを使うと、2つの薬剤を時間をずらして放出できる。すなわち、外皮が最初に血管新生阻害剤を放出して血管を遮断し、次に、腫瘍内部にとどまっていた内側のナノ粒子が化学療法剤を放出するのである。腫瘍内部での集中的放出によって、毒性が軽減され、治療係数が改善される。この方法はさらに薬剤を加えて拡張することも可能で、それによって複数のシグナル伝達系を標的にしたり、腫瘍の異なる区画を標的にすることができ、癌の「統合的」治療法のモデルになりうる。 Full Text PDF 目次へ戻る