地質学および古地震学的データは、更新世後期及び完新世初期に米国西部の盆地・山岳地域(Basin and Range Province)のワサッチ断層とそれに隣り合った3個の正断層で、滑り速度が顕著に増加したことを記録している。この同時期に起こった断層滑りの加速と、それに続いて完新世の時代に群発地震活動が起きたことの原因は謎である。しかし、滑り速度の増加と最終氷期極大期の後に起きたボネヴィル湖の収縮が同時期に起こっていることは、この2つの間の関係を示しているのかもしれないと考えられてきた。今回、流動学的な層構造を持ったリソスフェアに個別に存在する正断層を有限要素法によりモデル化し、断層滑りに影響を及ぼす2つの相対立する過程の相対的な重要性を検討する。この過程の1つは滑り速度を減少するように働く後氷期における(氷がなくなることによる)荷重の除去であり、もう1つは滑り速度を増加するように働くリソスフェアの反発である。本論文ではボネヴィル湖の退行に起因するリソスフェアの反発および隣り合った山岳地帯における退氷は、ワサッチ地域において完新世の時代に滑り速度が高かったことを説明できる機構となりうることを示す。この解析は、気候が原因となって地球表面に加えられた荷重が変化することが、個々の正断層の滑り過程を支配する重要な要因となる可能性を示している。