草食性の節足動物による攻撃を受けた植物は、葉から草食動物の天敵を引きつける揮発性化合物を放出することがよくある。今回、昆虫誘導型の、地中に放出される植物シグナル(E)-β-カリオフィレンを初めて同定した。この物質は昆虫病原性線虫を強く引きつける。トウモロコシの根は、現在ヨーロッパに拡がりつつあるトウモロコシの害虫であるDiabrotica virgifera virgiferaの幼虫による食害に反応して、このセスキテルペンを放出する。北米のトウモロコシ系列の大半は(E)-β-カリオフィレンを放出しないが、ヨーロッパ系列および野生祖先種であるイネ科植物のテオシント(teosinte)は、D. v. virgiferaの攻撃に応じて速やかにこれを放出する。この違いは、実験で代表的な系列の誘引性に顕著な相違がみられたことと矛盾しない。野外実験からは、シグナルを出す品種のトウモロコシに対するD. v. virgiferaの幼虫の線虫感染率は、シグナルを出さない品種に比べて5倍高いことがわかった。シグナルを出さない品種周辺の土壌に(E)-β-カリオフィレン標準品を加えたところ、D. v. virgifera成虫の出現率は半分以下に低下した。北米のトウモロコシ系列は、育種過程でこのシグナルを失なったものと考えられる。適量の誘引物質を放出する新品種が開発されれば、植物の根に害を与えるD. v. virgiferaなどの害虫に対する生物的防除材料としての線虫の有効性向上に役立つだろう。