Letter

視覚:視野検索のための最適な眼球運動戦略

Nature 434, 7031 doi: 10.1038/nature03390

視野検索を行うとき、ヒトは多くの哺乳類と同様、一様でない空間分解能をもった網膜で広い視野をコード化したあと、高速な眼球運動を用いてターゲットとなる可能性のある位置に対して最も高い分解能をもつ領域、すなわち中心窩を向ける。検索性能が優れていることは生存にとってきわめて重要であるため、哺乳類は注視位置の選択のために効率的な戦略を進化させてきたのだろう。本論文では、雑然とした環境の中でターゲットを見つけるという問題を課されたとき、中心窩という構造をもつ視覚系がとれる最適な眼球運動戦略とはどのようなものかという問題と、ヒトは最適戦略を実際の検索中に採用しているかという問題について検討する。我々はまず、検索のタスクをさせるために、ベイズの理想的な観察者を導き出した。そのタスクでは、自然情景と同じスペクトル特性をもったランダムな背景の中の不明な位置にターゲットがはめ込まれている。この理想的検索者は、ターゲットを含む情景の統計的性質についてと、自身の視覚系についての正確な知識を用いて、ターゲットの位置に関して最大の情報量が得られるように眼球運動を行う。我々は、ヒトが、注視点間の情報統合をほとんど行っていなくても、ほぼ最適に近い検索性能を達成していることを見出した。理想的検索者の分析により、注視点間の統合を完全化しても益は少なく、個々の注視点についての情報処理を効率化する方がはるかに重要であることがわかる。どうやら進化はこの事実を活用して、記憶に使う神経構造を最小にした効率的な眼球運動戦略を実現してきたらしい。

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