さまざまな観測から、大洋中央海嶺は拡大速度が20 mm yr-1以下では地殻の生産量が少ないことが示されており、拡大速度が減少するにつれて海嶺下で起きている基本的な過程に変化が生じていることを示唆している。しかしながら、これらの変化の性質はよく分かっておらず、端成分的な説明では熱的な蓋が厚くなる効果により、浅部での溶融が減少するかあるいは溶融物の抽出が不完全となることによるとされている。本論文では、残されたマントルの構造を明らかにすることにより大洋中央海嶺下の過程を研究するために計画された地震波屈折法の実験の結果を示す。この結果は、過去の拡大速度が低速から超低速へと変化すると共に、マントル全体の地震学的性質が水平方向に急激に変化することを明らかにしている。マントルの速度勾配、基盤の形状、および地殻の厚さの変化はすべて拡大速度の変化と相関がある。これらの観測は、海嶺における溶融物の抽出が変化し、拡大速度が遅いマントルには選択的にハンレイ岩が残ることで説明できる。保持された溶融物の推定体積は、地殻の厚さの差約1.5 kmと釣り合っており、拡大速度の変化が全体の溶融ではなく溶融物の抽出過程に影響を及ぼしていることを示している。