Letter

細胞:F1-ATP分解酵素による力学的なATP合成

Nature 427, 6973 doi: 10.1038/nature02212

ATPは生体の主要なエネルギー通貨であり、エネルギーを必要とする反応を用いてADPと無機リン酸からATP合成酵素により合成される。ATP合成酵素のF1部分は、F1-ATP分解酵素(F1-ATPアーゼ)とも呼ばれ、回転分子モーターとして働く。生体からF1-ATPアーゼだけを取り出すと、3つのβサブユニット上の触媒部位でATPを加水分解しながら、γサブユニットがそれを取り囲むα3β3サブユニットの中で回転する。生体内では、ATP合成酵素のFo部分を通り抜けるプロトンの流れによりγサブユニットが逆回転させられ、その結果ATPが合成されるものと広く考えられている。本論文では、力学的エネルギーによりATPの化学合成を駆動できることを、直接的証拠により示す。我々は、単離したF1をガラス表面に固定し、そのγサブユニットに磁性ビーズを取り付け、電磁石を用いてビーズを回転させた。正しい方向に回転すると、溶液中にATPが出現することが、ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応により検出された。これは、タンパク質機械のある一点にある向きの力(トルク)をかけるだけで、そこから物理的に離れている触媒部位で起こる化学反応に影響を与え、平衡状態からはるかに離れたところまで反応を駆動できたことを示すものである。

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