Raf、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼ(MEK)およびMAPキナーゼからなるシグナル伝達カスケードは、Rasエフェクター経路として環境刺激に対する細胞のさまざまな応答に関与し、Ras依存性の発癌性形質転換にもかかわっている。本論文では、Rasのエフェクタータンパク質Impedes Mitogenic signal Propagation(IMP)がMAPキナーゼカスケードの刺激に依存した活性化に対する感受性を調節することを報告する。この調節は、活性化されたRafをその基質であるMEKと結合させる足場/アダプタータンパク質KSRを不活性化して、コア酵素成分の集合を妨げることによって行われる。IMPはRas応答性のE3ユビキチンリガーゼで、Rasが活性化されると自己ポリユビキチン化によって修飾され、これがRaf-MEK複合体の形成阻害を解除する。つまりRasは、同時に2つのエフェクター作用を介してMAPキナーゼカスケードを活性化する。1つはRafキナーゼ活性の誘導であり、もう1つはRaf-MEK複合体形成の抑制解除である。IMPを欠乏させると、刺激に依存したMEKの活性化が増加するが、応答の時期や長さは変化しない。これらの観察結果から、IMPは閾値調節因子として機能し、刺激に対するMAPキナーゼカスケードの感受性を調節していること、またIMPを利用した仕組みが、長期にわたるシグナル伝達あるいは複雑なシグナル伝達が誘導される環境におけるカスケードの適応を可能にしていることが示唆される。