Letter 化学:メビウス芳香族炭化水素の合成 2003年12月18日 Nature 426, 6968 doi: 10.1038/nature02224 芳香族炭化水素化合物の決定的な特徴は、π電子の非局在化によって安定化した環状分子構造であり、ヒュッケル則によるとπ電子数は合計4n + 2(n = 1,2,...)個でなければならない。これに対して、4n個のπ電子を持つ環状化合物は反芳香族であり、不安定である。しかし1964年、Heilbronnerは純粋に理論的な根拠に基づいて、メビウスの帯、すなわち長方形の帯の一端を半回転ねじってから両端をつなぎ合わせることによってつくられる輪のトポロジーを持つ環状分子は、4n + 2個ではなく4n個のπ電子を持つ場合に芳香族となることを予測した。その予測に刺激されてメビウス芳香族炭化水素を合成する試みがなされたが、ねじれた環状分子は環の大きな歪みによって不安定化するとともに、電子の非局在化と安定化に関与するp軌道のオーバーラップもねじれによって抑制される。大環状分子の場合、環の歪みはそれほど顕著でないが、構造が柔軟なので反転して歪みの小さいヒュッケル・トポロジーとなる。メビウス・トポロジーを持つ遷移状態種、不安定中間体および非共役環状分子については報告されているが、安定な芳香族メビウス系はまだ実現していない。今回我々は、p軌道が環面に対して直角な「通常の」芳香族構造と、p軌道が環面内にある「帯状」芳香族構造とを組み合わせることによって、拡張π電子系によって安定化されたメビウス化合物が得られることを報告する。 Full Text PDF 目次へ戻る