Research Press Release

化学:シベットコーヒーの秘密は化学にあり

Scientific Reports

2025年10月24日

アジアジャコウネコ(パームシベット;Asian palm civet、Paradoxurus hermaphroditus)の糞から採取されたコーヒー豆は、従来方式で収穫された豆よりも脂肪分やそのほか風味を向上させる主要成分の含有量が高い可能性がある。オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載されるこの研究結果は、この種のコーヒーが非常に高価な理由を説明する手がかりとなるかもしれない。

コピ・ルアク(kopi luwak)としても知られるシベットコーヒー(ジャコウネココーヒー;civet coffee)は、世界で最も高価なコーヒーの一種であり、豆1キログラムあたり1,000米ドル以上で取引されることもある。この豆は、熟したコーヒーの実を食べたジャコウネコ(通常はアジアジャコウネコ)の糞便から採取される。ジャコウネコは、果肉を消化するが、内部の豆は消化管を通過する。この種のコーヒーは、100年以上も収穫・販売されてきたが、この特異な収穫方法がコーヒーの化学組成を変えるかどうかについては、今なお議論がある。

Palatty Allesh Sinuら(ケーララ中央大学〔インド〕)は、2025年1月、インド・カルナータカ(Karnataka)州でロブスタ(Robusta)コーヒーを栽培する5つの農園で、野生ジャコウネコから68の糞便サンプルを採取した。比較のため、各農園から熟したコーヒーベリーも収集した。全豆グループのサンプルは、洗浄後、化学分析のために粉砕された。分析結果によると、シベットコーヒー豆は手摘み豆に比べて総脂肪含有量が有意に高く、さらに2種類の脂肪酸メチルエステル(FAME:fatty acid methyl esters)——カプリル酸メチルエステル(caprylic acid methyl ester)およびカプリン酸メチルエステル(capric acid methyl ester)——の含有量も有意に高かった。

著者らは、シベットコーヒーの化学的な違いは、ジャコウネコの消化管内での豆の発酵に起因すると示唆し、この違いがコーヒーの最終的な風味に影響を与える可能性が高いと指摘している。脂肪含有量の高さがコーヒーの香りと味のプロファイルに影響を与える一方、2種類のFAMEの高レベル含有は、乳製品のような風味を加える可能性があるとしている。ただし、著者らは、分析対象が未焙煎豆であること、および焙煎工程が化学組成をさらに変化させる可能性について注意を促している。また、分析対象がロブスタ(Robusta)豆であったのに対し、シベットコーヒーの大半はアラビカ(Arabica)豆から生産される点も指摘している。

Mitra, R., Jose, T., Abhiram Krishnan, P. et al. Civet Robusta and natural Robusta coffee are different on key fatty acid methyl esters and total fat. Sci Rep 15, 36281 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-21545-x
 

doi:10.1038/s41598-025-21545-x

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