【生態】漁場と消費地がますます離れている
Nature Communications
2015年6月17日
海産魚類の漁場から消費地までの距離は、1950年代以降、長くなる傾向が続いていることを明らかにした論文が、今週掲載される。水産市場の拡大がこのままのペースで22世紀まで続けば、全世界の需要を満たせなくなる可能性が高い。
20世紀の人口増加と世界貿易の拡大で、タンパク質供給源としての魚類に対する需要が増加した。漁船団の効率が技術的に向上したことが、漁業活動の拡大をもたらしたが、今後、世界の海洋が、こうした需要にどの程度対応できるのかは不透明だ。
今回、Reg Watsonたちは、国連食糧農業機関(FAO)が集めた世界の漁獲量データを解析し、漁場と消費地間の距離が1950年から2011年まで年々長くなってきたことを明らかにした。また、Watsonたちは、現在の漁獲量を産出するために必要なエネルギーと(人工衛星データより算出した)海洋生産量を比較して、1950~2011年に漁場と消費地の間の距離が長くなることで、必要なエネルギーが各海域の年間生産量のより多くの割合を占めるようになったことを見いだした。
また、Watsonたちは、この傾向を2100年まで予測し、過去10年間と同様に漁獲量が変わらないと仮定すれば、今後の食料需要を満たすための方法は海洋魚の養殖産業の拡大しかないと結論づけた。それでも、養殖産業は、養殖サケのような大型の捕食種の餌に用いる海洋由来の魚粉の使用割合を減らすという課題に直面する可能性が高い。
doi:10.1038/ncomms8365
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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