Research Press Release
痛覚の遺伝的性質
Nature Genetics
2015年5月26日
ヒトが痛みを感じる能力を保持するために必須の遺伝子が同定されという報告が、今週のオンライン版に掲載される。この遺伝子によって産生されるタンパク質は、新たな鎮痛剤の開発にとっての有望な標的分子となる可能性がある。
先天性無痛症(CIP)は、肉体的苦痛を感じることができないことを症状とする稀少な疾患だ。CIPには複数の原因があり、CIPの発症に至る分子変化を解明すれば、慢性疼痛の治療薬の開発に役立つ可能性がある。
今回、C. Geoffrey WoodsとJan Senderekたちの研究グループは、血縁関係のない11家系においてCIP患者を同定した。これらの患者のPRDM12遺伝子は2コピーとも変異していた。この変異を有する者は、生まれつき痛みを感じることができず、不快な暑さと寒さを区別できなかったが、その他の感覚はほぼ正常だった。Woodsたちは、正常なマウス細胞とヒト細胞を用いて、PDRM12が特に痛覚受容器(侵害受容器)とその関連細胞で発現していることを明らかにした。またWoodsたちは、カエルを用いた実験でPDRM12タンパク質の発現を抑制し、PDRM12タンパク質が感覚ニューロンの発生に極めて重要な役割を担っていることを発見した。
doi:10.1038/ng.3308
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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