【疾患】アルツハイマー病の進行を予測する
Nature Communications
2015年5月20日
鉄を貯蔵するタンパク質であるフェリチンの濃度が上昇することは、認知能力の低下と関連しており、フェリチン濃度の上昇によって軽度認知障害の患者がアルツハイマー病(AD)を発症するかどうかを予測できることを報告する論文が、本日に掲載される。
過去の研究ではアルツハイマー病患者の脳内で鉄の濃度が上昇していることが観察されているが、脳内鉄濃度とアルツハイマー病の臨床転帰との関連を断定するに至っていない。今回、Ashley Bushたちは、302人の脳脊髄液で検出されたフェリチン濃度と7年間のさまざまな転帰との関連性を調べた。この302人全員は、アルツハイマー病神経イメージングイニシアチブ(ADNI)の前向き臨床コホートに含まれている。
Bushたちは、認知機能が正常な者、軽度認知障害患者とアルツハイマー病患者において、フェリチン濃度が認知能力と負の関連をしていることを発見した。そして、Bushたちは、フェリチン濃度を用いて、軽度認知障害からアルツハイマー病への進行を予測した。フェリチンは、アルツハイマー病のバイオマーカーであるアポリポタンパク質Eの濃度と強く関連しており、アルツハイマー病のリスクと関連する遺伝子多様体APOE-ε4を持つ人においてもフェリチンの濃度が高かった。
今回の研究結果は、遺伝子多様体APOE-ε4と脳内鉄濃度の関連を明らかにしており、APOE-ε4の変異がアルツハイマー病の発症リスクとなる機構と考えられるものも示している。また、今回の研究は、脳内鉄濃度を下げてアルツハイマー病を治療する戦略の実施を支持する内容になっているが、この点については今後の研究で探索を行う必要があると考えられる。
doi:10.1038/ncomms7760
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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