Research Press Release
【薬理学】不安と睡眠障害を治療する効果のある合成分子
Nature Communications
2014年12月24日
マウスの研究で、生得的に備わっている体内時計を標的とする合成分子を投与すると、マウスが眠らずにいられるようになり、冷静さも保ったという報告が、今週掲載される。著者は、今回作製された化合物が、不安、睡眠障害と依存症の治療に用いる新種の薬剤の開発につながることを期待している。
哺乳類の体内時計は、さまざまな遺伝的成分と分子成分によって構成されており、その生理と行動において重要な役割を果たしている。例えば、交代勤務や薬物、遺伝的変異などによって体内時計が乱されると、心身の健康が損なわれる場合がある。今回、Thomas Burrisたちは、哺乳類の体内時計の特定の成分と相互作用する分子をマウスに投与して、覚醒時間の延長、睡眠の抑制、不安様行動の減少が実現される過程を明らかにした。
ベンゾジアゼピン類などの既存の抗不安薬は、不安を抑える一方で、眠気を催す。その点で今回の研究で合成されたSR9011はユニークな分子であり、眠気を催さない初めての抗不安薬になると考えられている。また、齧歯類の行動研究では、SR9011が薬物中毒を起こす可能性がベンゾジアゼピン類より低いという結論が得られた。さらに、マウスの実験で、SR9011は報酬探索行動を抑制することが明らかになり、依存症の治療に役立つ可能性もある。ただし、ヒトに対するSR9011の効果を見極めるためには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/ncomms6759
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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