【芸術】絵画の技法の進化
Scientific Reports
2014年12月11日
西洋の絵画は、中世以降、色彩が豊かになり、明暗の対比が複雑になったことが実証された。この研究では、10の美術史上の区分(800年以上)にわたる約9000点の絵画のデジタル解析が行われ、画家が使用する色の範囲の変化や新しい絵画技法の開発に対応する特徴が明らかになった。この研究結果の報告が、今週掲載される。
今回、Hawoong Jeongたちは、デジタル画像技術を用いて11世紀から19世紀中期までの合計8798点の西洋絵画における個々の色の使用状況、色の多様性、明度の幅を調べた。これらの絵画は、美術史の10区分(中世、初期ルネサンス、北方ルネサンス、盛期ルネサンス、マニエリスム、バロック、ロココ、新古典主義、ロマン主義、写実主義)に分類された。
今回の解析では、中世以降のヨーロッパの絵画史において、油絵の具と新種の着色顔料の導入によって、画家が使用する色の範囲が拡大したことが数値で表された。また、この解析で、明度対比を利用した絵画が増えたことも明らかになったが、ルネサンス期に、スフマート(物体と背景の間の輪郭線をなだらかにぼかす技法で、レオナルド・ダヴィンチ(1452~1519)が用いた)、キアロスクーロ(明暗の強烈な対比を用いた画法、レンブラント・ファン・レイン(1606~1669)が用いた)などの技法が開発されたことを反映している。
Jeongたちは、科学技術を用いた絵画の解析によって、芸術と科学の世界の橋渡しができるという考え方を示している。
doi:10.1038/srep07370
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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