【社会科学】裁くな、裁かれないために
Nature Communications
2014年10月29日
人は、不公平な行為について、それが他者に向けられたものでない場合、他の選択肢がある状況ではその行為の処罰を望まないことが示された。この知見は、ヒトの社会行動に関するこれまでの解釈とは異なる。
社会において、公平性は、社会的効率および協力を促す行動規範として機能している。公平性に関する研究はこれまで、不公平な状況に置かれた実験参加者に対して「罰を与える」あるいは「何もしない」の2つの選択肢を選ばせるものであった。しかし、こうした実験系は、日常生活における状況を反映していない可能性がある。
この問題に取り組むためにElizabeth Phelpsらは、実験参加者が、他の参加者から不公平な扱いをされたと感じたときに、罰を与えるか、もしくは補償を求めるかという、幅のある選択肢を選べる新しい経済ゲームを開発した。その結果、不公平な状況に対応する際に別の選択肢(状況を受け入れたり、補償を求めたりすることなど)がある場合、不公平に扱われた参加者は、不公平な行為者に罰を与えることよりも、状況の受容あるいは補償の要求を選ぶことが分かった。
一方で、参加者が不公平に扱われた別の誰かに代わって判断する場合、可能なかぎり最も厳しい経済的な罰を与えることを選ぶことが多かった。Phelpsたちは、今回の結果が、法制度が違反者へ罰を課そうとする際に有用な情報を与えるのではないかと期待する一方で、介入が可能な前のこうした行動に関する理解を深めるためには、さらなる研究が必要であると考えている。
doi:10.1038/ncomms6306
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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