【微生物学】「ジキル博士とハイド氏」の細菌版
Nature Communications
2014年10月1日
肺炎と細菌性髄膜炎の症例では、肺炎連鎖球菌を原因とするものがかなりの割合を占めている。ところで、この肺炎連鎖球菌は、毒性が変動するのだが、その原因は分かっていない。今回掲載される論文で、その原因が遺伝子のランダムなシャフリングであることが明らかになった。これと似た遺伝子が、他の病原性細菌にも存在しているため、今回の研究で得られた知見は、感染症の分野に広く影響を与える可能性がある。
肺炎連鎖球菌は、一般にヒトの鼻と喉に常在する細菌で、害を及ぼすことはないが、子どもや免疫不全の患者は重症の感染症を起こすことがある。また、この細菌は、無害なものになったり、極めて毒性の強いものになったりすることが1930年代から知られているが、このような切り替えの基盤となっている機構については明らかになっていない。
今回、Marco Oggioni、Michael Jenningsたちの研究グループは、この細菌がジキル博士とハイド氏のように状態を変化させる原因として、ランダムな再編成を頻繁に起こして、6つの状態のいずれか1つになる遺伝子集団を挙げている。それぞれの状態では、この細菌のゲノム上の異なるDNA配列のメチル化が起こり、それが、細菌の毒性やその他の特性を決める多くの遺伝子の発現に影響を及ぼしている。
こうしたランダムな遺伝子シャフリングの基盤となる機構を解明し、他の細菌における遺伝子制御に関与する類似の過程を明らかにするためには、さらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/ncomms6055
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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