渇いたハエに報いる
Nature Neuroscience
2014年9月29日
渇いたショウジョウバエは水を報酬ととらえるが、これを仲介する神経回路は砂糖や食物に対する報酬を仲介する回路とは異なるとの論文が、今週のオンライン版で報告される。これは、哺乳類の報酬回路との類似を示唆し、異なる型の報酬を仲介する系が進化の過程で保存されている可能性を示している。
心理学者は動物の報酬を、欲する(wanting)、学ぶ(learning)、好む(liking)という要素に分け、これらを実験室での摂食行動を用いて評価する。「欲する」は動物が食物を資源として探そうとする望みを意味し、「学ぶ」は食物自体に資源としての価値を割り当て、そして、動物がある物質を口に合うものとして受け入れたならばそれを「好む」と見なす。
Scott Waddellたちは、通常の条件下で水の足りているショウジョウバエは水を避け、乾いた環境を好むものだが、それに反し水を奪われたショウジョウバエは水を探し出そうとすることを発見した。Waddellたちはまた、こうした水を探す行動はハエの脳内で神経伝達物質のドーパミンを放出するニューロンが仲介すると報告している。その研究によると、これらのニューロンは独自の集団をなしており、砂糖などの食物の摂取からの「正の強化」といった他の報酬要素を処理する神経回路とは区別される。
Waddellたちは、ハエは水を「欲する」のと「好む」のを分離でき、水を好む行動(好みの食物をとるのに用いる口器の一部である口吻を伸ばす)だけでなく、水を探す独特の行動を示すことを発見した。この研究は、ショウジョウバエが哺乳類と同様に、ある報酬を「欲する」こと、価値を「学ぶ」こと、そして報酬を「好む」ことを心理物理的に区別できることを明らかにしている。
doi:10.1038/nn.3827
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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