【セキュリティー】目に見えない感熱式バーコードによる物品の標識
Scientific Reports
2014年6月5日
このほど、ナノ粒子の独特な熱特性を活用した「見えない」バーコードによって、さまざまな物品の追跡調査、出所調査や真正証明を行うという手法が開発され、爆発物や薬物、インクの標識に利用できると考えられている。その詳細を報告する論文が掲載される。この手法には期待が持てるかもしれない。
目に見えるバーコードは、改変あるいは複製の恐れのある物品の標識、そして、製品の偽造と違法使用の問題に対処するために広く用いられている。この代替法としては、目に見えない標識が有望視されているが、分解しやすいことやコーディング容量の制限などのさまざまな問題のため、既存の手法では、大規模な標識に対応できない。今回、Ming Suたちが開発した目に見えないバーコードシステムは、独特な融点によって識別されるナノ粒子を用いており、こうした問題を克服できるかもしれない。
今回の研究では、ナノ粒子を用いたバーコードが固体と液体の薬物に添加されて安定を保ち、毒性は検出されなかった。その結果、この目に見えないバーコードを薬物の真正証明に活用し得ることが明らかになった。また、Suたちは、この手法を用いて、トリニトロトルエン(TNT)の前駆物質であるジニトロトルエンを標識して、爆発後の残骸の熱的特徴を検出することによって爆発物の出所解明を法医学的に行えることを明らかにした。さらに、Suたちは、印刷用のインクとポリマーに特定のナノ粒子を添加すれば、偽造防止に役立つと考えている。
今回開発された手法は、ナノ粒子の小ささ、鋭い融解ピークと熱分析の温度範囲の広さのおかげで、大量の物品の標識に利用でき、法医学調査を改善できる可能性がある、とSuたちは結論づけている。
doi:10.1038/srep05170
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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