【感染症】鳥インフルエンザの新たな管理手段
Nature Communications
2014年5月7日
鳥インフルエンザ患者においてアンギオテンシンIIの血中濃度が高いことが、重い症状と転帰に関連していることを報告する2編の研究論文が掲載される。これらの研究では、マウスを用いた実験で、薬物を用いてアンギオテンシンIIの血中濃度を下げることで、病状が軽減された。今回の研究で得られた知見は、将来的なインフルエンザの大流行に対処するためのバイオマーカーや治療法に役立つ可能性がある。
今回、Lanjuan Li、Chengyu Jiangたちは、鳥インフルエンザウイルスH7N9亜型に感染した患者は、アンギオテンシンIIの血漿濃度が、健常者やブタインフルエンザ患者より高いことを報告している。そして、H7N9患者において、アンギオテンシンIIの血漿濃度とウイルス量、疾患の進行、死亡する確率が相関していることが判明し、アンギオテンシンIIに基づいて死亡する確率を予測する場合の精度が、血中酸素濃度など他の一般的な臨床的指標に基づく予測と同等かそれ以上であることも判明した。
一方、Chengyu Jiangたちの第2の研究では、鳥インフルエンザウイルスH5N1亜型に感染した患者のアンギオテンシンIIの血清中濃度が、健常者よりも高いことが明らかになった。また、この研究では、H5N1ウイルスを感染させたマウスを用いた実験が行われ、アンギオテンシンIIの血清中濃度が上昇したことに加えて、アンギオテンシンIIを不活性化させるタンパク質であるACE2(アンギオテンシン転換酵素2)の発現が低下したことも判明した。そして、H5N1ウイルスに感染したマウスにヒトACE2を投与した実験では、病状が改善し、アンギオテンシンIIの血清中濃度が低下することが分かった。
以上をまとめると、この2つの論文は、臨床的意義を有していると考えられ、鳥インフルエンザ患者における疾患の進行の基盤となる機構に関する新たな知見をもたらしている。しかし、アンギオテンシンIIが有用なバイオマーカーであることを検証し、ACE2の治療効果を評価するためには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/ncomms4594
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change