押しボタンで選択にバイアスをかける
Nature Neuroscience
2014年3月10日
何かの価値を判断するとき、その物を提示すると同時に無関係な音でボタンを押す合図を出すだけで、その物の判定価値を増加させることができる。このような報告が、今週のオンライン版に掲載される。これは、選ぼうとする対象物を直接操作せずとも人の好みを変化させられる場合があることを示唆している。
Tom Schonbergたちは、研究の被験者に対し、さまざまなスナック食品にそれぞれいくらぐらい支払う意思があるかを尋ねた。次に被験者は、コンピューター画面で異なる食品群の画像を見せられた。たいていの物は受動的に見るだけだったが、いくつかは聞いたらすぐにボタンを押さなければならない音とともに見るようになっていた。この実験段階の後、被験者は、実験開始時に同じ対価だとみなしていた2組のスナック食品から一方を選ぶ決断をした。すると被験者は、その実験時間内の60~65%で音とともに見た物を選び、続く実験では当初は等価だった対応物よりも音とともに見たものに高額を支払おうとした。行動面のこの変化は、新しい誘因や追加情報、あるいは親しみやすさの増加などを何1つ付加しなくても 起こり、この効果は少なくとも2か月は持続した。他の被験者についての神経画像化研究では、腹内側前頭前野で好みに関連する活性の増加が明らかにされた。この脳領域は、意思決定おいて主観的な価値の表出にしばしば関わるとされている。Schonbergらは、合計240名の被験者からなる5つの独立した実験群で、選択におけるこの効果を確認した。
Schonbergたちは、今回の結果は選択を改変させるのに役立つ手段を示唆していると確信している。
doi:10.1038/nn.3673
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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