Research Press Release
【天文学】宇宙塵の分解による分子生成
Nature Communications
2014年1月22日
星間空間において大型の炭素含有分子が形成される過程に関する新たな説明を示した論文が、今週掲載される。宇宙でこうした大型分子が生成する過程は未解明で、宇宙塵粒子のグラファイト表面が分解することで大型分子が生成するという学説が提唱されている。今回、超高真空槽において星間空間状態を再現することで、この学説の検証が行われた。
大型電波望遠鏡を用いた観測で、星間空間に大量の多環芳香族炭化水素(大型の炭素含有分子)が見つかっているが、その存在理由と星間条件下での生成過程は未解明のままだ。これまでに提唱された多環芳香族炭化水素の生成に関する学説の多くは、小さな分子が反応して大きな分子が生成するボトムアップの化学過程に基づいている。しかし、ボトムアップ機構では、多環炭化水素が宇宙に大量に存在する理由を説明できない。今回、Pablo Merino、Jose Martin-Gagoたちの研究グループは、星間物質中の多環炭化水素の生成においてトップダウン機構も働いている可能性を明らかにした。この研究では、超高真空槽において宇宙の状態が再現され、炭化ケイ素ででき、グラファイトの表面を有する宇宙塵粒子が原子状水素にさらされると、分解して多環芳香族炭化水素を生成することが明らかになった。宇宙に存在する多環炭化水素の量が、この機構によって説明できるかもしれない。
doi:10.1038/ncomms4054
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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