【化学】シチメンチョウから着想したセンサーでヒトの健康を守る
Nature Communications
2014年1月22日
このほど開発されたセンサーは、生体の機能や構造に啓発されたもので、種々の揮発性有機化合物に応じて変色する点に特徴がある。このセンサーは、シチメンチョウの皮膚の構造とシチメンチョウが気分に応じて皮膚の色を変える能力を模倣したもので、ヒトの健康にとって脅威になるさまざまな有害な毒物や病原体を簡便に検出できるようになっている。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
刺激に応答して変色する物質は、自然に数多く存在し、センサーの基盤としての利用に高い関心が集まっている。しかし、天然の物質もそれを代替する合成物質も特定の化学物質に対しては選択性がないため、そうした選択性の導入が課題となっていた。今回、Seung-Wuk Leeたちは、線維状細菌ウィルスでできたセンサー材料を作製した。この線維状細菌ウィルスは、揮発性有機化合物にさらされると急速に膨潤し、独特な色の変化を起こす。また、Leeたちは、このセンサーを調整することで、トリニトロトルエン(TNT)に応答し、その検出ができるようになることも明らかにし、この調整によって、他の有害化学物質の検出も可能になると考えている。
さらに、Leeたちは、この色の変化を簡単なスマートフォンのカメラで測定でき、こうした有害な化合物の存在と濃度を確実に示せることを明らかにした。この簡便で低コストの検出法は、標的物質に応じたセンサーの調整と組み合わせることで、環境中の有害で危険な化学物質の検出法として注目を浴びるかもしれない。
doi:10.1038/ncomms4043
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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