Research Press Release
【がん】肝がんの治療にステロイドを用いる
Nature Communications
2013年10月23日
ステロイドの一種であるデキサメタゾンは、現在、炎症性疾患と自己免疫疾患の治療に用いられているが、これを使ってマウスの肝がんの形成を抑制できることが明らかになった。この新知見は、ステロイド類の使用が、最も一般的なタイプのヒト肝がんである肝細胞がんの治療に役立つ可能性を示唆している。
今回、Bo Huangたちは、マウスの肝細胞がんにおいてグルコースの代謝が変化し、腫瘍細胞が利用する代謝反応が切り替わることを明らかにした。この現象に伴って11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型という酵素が減少した。この酵素は、齧歯類においてステロイドホルモンを産生する。そして、Huangたちは、マウスにデキサメタゾンを投与すると、グルコース代謝が腫瘍形成前のレベルまで回復し、肝腫瘍の形成が抑制されることを明らかにした。また、マウスに対するデキサメタゾンの投与で、化学的に誘導した腫瘍の形成も抑制された。さらには、ヒトの肝がんで11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型の発現が減少したことも判明した。
以上の知見は、代謝変化を標的とすることが肝がんの有益な治療法となる可能性を示唆している。
doi:10.1038/ncomms3508
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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