抗体の決して終わらない供給
Nature Methods
2013年8月19日
ゲノムがどのように調節されているのかを研究するための再生可能で高品質の試薬を作製する方法が、今週オンライン版で発表される。遺伝子発現をオン・オフするタンパク質の同定に利用される従来の抗体は再生不能であり、目的とする標的の認識が特異的でない場合が多いという事実があるが、今回の方法はその「抗体のボトルネック」を解決するものである。
遺伝子発現を調節するものとしては、DNAを構成する4種類の塩基のほかに、DNAと結合するタンパク質、なかんずくヒストン(DNAを巻きつける「スプール」タンパク質)が存在する。特定のアミノ酸に対するメチル基の付加など、そのヒストンの化学的修飾は、DNAにコードされた遺伝子が発現するかどうかに影響を与える。ゲノムの調節に対するヒストン修飾の影響を明らかにする研究は、ヒストン上の特定の修飾を認識する抗体に大きく依存している。問題は、そうした抗体が基本的に動物を用いて異なるバッチで作製されており、バッチ間で質が大きくばらついていることである。ひとたび良質のバッチが尽きると、次のバッチが同じく良好に機能するという保証はどこにもない。
小出 昌平(こいで・しょうへい)たちは動物による抗体生産に見切りをつけ、遺伝子ツールを利用することにより、ヒストン上の特定の修飾に対する特異性の高い組み換え抗体を細菌で作製した。その抗体は、動物を用いて生産された市販の抗体と比較して、性能が優れているとともに、時間が経っても質が劣化しないことが明らかにされた。また、その作製法では複数の修飾に対する抗体の開発も可能であり、それは例えば、隣接するメチル基やそのほかの後生的な修飾の組み合わせが遺伝子発現に対してどのように影響するのかを明らかにするうえできわめて有用と考えられる。
doi:10.1038/nmeth.2605
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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