Research Press Release
穀物不作の予測
Nature Climate Change
2013年7月22日
世界中で発生した穀物不作事象を再現するコンピューターシミュレーションの精度が高ければ、世界の食料生産を監視するうえで季節予報が役立つ可能性があるという見解を明らかにした論文が、今週、オンライン版に掲載される。
今回、飯泉仁之直(いいずみ・としちか)たちは、統計的作物モデルと気候のアンサンブル季節予報を組み合わせて、この作物モデルが、世界の主要作物(コムギ、ダイズ、トウモロコシ、イネ)の不作をどの程度正確に再現できるかを評価した。その結果、気候予報の精度が十分に高ければ、収穫面積のかなり大きな割合(26~33%)での収量減を予測できることが判明した。ただし、収量予測の信頼性は、作物の種類によって有意なばらつきがあり、イネとコムギの収量の予測可能性が最も高かった。
今回の研究において高い信頼度で予測できた収穫面積の割合は、それほど大きくないように見えるが、今回達成された不作の予測可能性は、世界の食料生産を監視し、価格変動のおそれに関する手がかりを得るために十分なほど高い。こうした情報は、食料供給システムを極端な気候に適応させる政策の裏づけにもなりうる。
doi:10.1038/nclimate1945
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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