Research Press Release
【がん】最適な卵巣がんモデルを見つける
Nature Communications
2013年7月10日
研究に最も頻繁に用いられる卵巣がん細胞株の一部が、すぐれた卵巣がんのモデルとは言えないことが、このほど行われたゲノム解析で明らかになった。
臨床腫瘍検体に由来するがん細胞株は、がん研究に頻繁に利用され、がんの生物学的性質に数多くの手がかりをもたらしてきた。今回、Nikolaus Schultzの研究チームは、「がんゲノムアトラス」(臨床卵巣がん検体のゲノムの特徴を明らかにした)と「がん細胞株百科事典」(研究に用いられる約1,000種のがん細胞株のゲノムの特徴に関するデータが含まれる)という大規模な遺伝子配列解読プロジェクトの一般公開されたデータセットの解析を行った。Schultzたちは、この2種類のデータを相互に照合し、約50種の卵巣がん細胞株について、高悪性度漿液性卵巣がん(HGSOC)患者から採取した臨床検体とのゲノムの類似性に基づくランキングを作成した。その結果、HGSOCに関する既発表論文の60%を占め、最も頻繁に用いられている卵巣がん細胞株2種が、HGSOCとの類似性がそれほど高くないことが判明した。その一方で、最適な卵巣がん細胞株12種は、既発表論文のわずか1%でしか使われていなかった。
今回の研究で示された方法論的枠組みは、他の細胞株やさまざまなタイプのがんに適用することによって、それらの研究手段としての有効性評価に役立つと考えられる。
doi:10.1038/ncomms3126
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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